二宮和也という俳優について
彼は俳優であることではなく、アイドルが俳優の中に入りどれだけできるか、など、あくまでも自分はアイドルであるというスタンスでいる。
ジャニーズのなかでも屈指の演技力を持つ彼がとうとうアカデミー賞を取った。快挙である。
なので、アイドルである彼ではなく俳優の二宮和也を語ろうと思う。
彼の演技はとても自然で、作中の彼が演じている人物がもしかしたら本当にいる、いたんじゃないか？と思わせるぐらいだ。
誰がやってもいいけど、でも彼にこの役をやらせたい！！そう思えるような役者である。
二宮の場合、貧乏な高校生、両親の復讐をする詐欺師で長男、フリーター、原爆で命を落とす医大生など、様々な役を広く演じられる。
特殊な設定もあるが、割と普通の、日常生活で言うと目立つか、目立たないかで言うと目立たない方の人間を演じることが多い。
彼が演じると、本当に彼がそういう風に生きてきたのでは？というふうに見えるのだ。
目線の運び方や、仕草、声色、セリフのイントネーションの付け方など、頭の毛先から足の指先までその登場人物である。そういられるのだ。
直近の作品だと、やはり母と暮らせば。
監督、キャスト共にものすごく実力のある方ばかり揃った作品だが、二宮も演技の存在感は負けてなかった。他のキャストの個性を殺すというよりは、他のキャストと同調している存在感だった。
舞台が長崎ということで、みんな長崎弁を使っていたが長崎出身の人たちなんじゃないの？というぐらい長崎弁がうまかった。
母から町子が先生になったと聞いた時の、町子がね？あの一言は演じる人によって大きく変わるんじゃないかと思った。
町子がね？と聞こえるか、街こがねと聞こえてしまうか、いろいろ変わる。
母と息子がもう戻らない思い出の日々を語り合うときに、昔はあんなだったねと実家に帰った息子が母に語りかけるような暖かさがあった。吉永小百合さんのお母さん感もすごかったが、二宮が吉永さんの息子なんじゃないの？ってぐらい息子すぎた。
圧倒的にすごいと思ったのが泣くシーン。
町子は生きてる人だけど、自分は死んだ人だから町子とは生きていけないし、町子には町子の人生があるから町子のことは諦めろと言われるシーン。自分の死を受け入れられない息子の涙。
劇場で見た時多くの人がこのシーンで泣いていたのを覚えている。同情して泣いた人もいるだろうが、私は二宮和也の泣く演技にやられた。
あの人泣くとき本当に切なそうな、この世の終わりだ、みたいな表情で泣くから辛くなる。彼にはもっと泣く芝居を見せてほしい。
30代になって、演技の幅も広がってきた。だからもっといろんな芝居をしてほしいと思う。
俳優としての二宮和也は、この作品にいてほしい、と思われるような俳優なのではないだろうか。
まず、黒木華さんが助演女優賞を授賞し、彼女がスピーチをしているとき。目頭を抑えていた。泣いていたのか。
めったに人前で泣かないし、感情を顕にシない彼が仲間の授賞に涙を見せた。
その涙でわたしはやられた。あ、すごいこの人って。優しい人だ、温かい人だ。だから彼の周りの人間は優しい人が集るんだ。そう思った。
そして、極めつけは彼が主演男優賞を授賞した際のスピーチ。
目に涙を浮かべながら語った。岡田くんの授賞を見て、悔しい、俺も欲しいと思った。そう言った。わたしはビックリした。あまり自分の感情を出さない彼が、はっきりと"悔しい"と言ったこと。その後に、岡田くんから次はお前だと言われた。もうその言葉だけで2015 年の彼がどれだけ努力して自分の仕事をしてきたか、見せつけられた感覚になった。
もう、ヲタはそこで泣きましたよ。涙止まらなくて。
仕事どんだけやるんだよ、休めよって思ってたけど、この賞のためにたくさん頑張ってきた彼が本当に誇らしいと思った。
また、スピーチに嵐の名前を出したこと。たぶん、授賞したという喜びは大きくて、ビックリするだろう。頭の中が白くなるだろう。そんな中でちゃんと、自分のいるべき場所である嵐の名前を出したこと。そこは大きかった。メンバーのことを思ってることもそうだし、自分は嵐の二宮和也ですって改めていろんな人に伝えていた。
すごい人だと思った。
ああ、ほんとにすごい人だ。ただそれだけ。
あんな光栄な賞をとってさらに今年もたくさん活躍するであろう彼がとてもかっこいいと思う。
これからも体調には気をつけて、仕事を頑張って欲しい。
